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本記事の内容
目次
スクワットで足首が詰まる、ニーインする、過去に捻挫をして思うように足首が動かない、痛む、誰しもトレーニングをしていて何かしら足関節の問題に出会った事があるはずです。
いわゆる足の骨は、片足で28個、両側で56個、人間の全身の骨の数はおおよそ206個と言われていますので約1/4が足に存在しています。
骨が存在しているということは、そこに多くの関節が存在し、その他の軟部組織も非常に細かく存在しています。
この複雑なシステムを理解していくには、まず主要な関節の構造を理解する事が非常に重要です。中でも距腿関節(いわゆる皆さんが知っている足関節)は、底屈と背屈の要でありなんとなくイメージはつきやすいと思います。
しかしその直下に距骨下関節(距骨と踵骨の間)については、その存在を知らない、存在は知っているが関節のイメージがつかない方も多いのではないでしょうか?
今回はこのわかりにくい距骨下関節を可能な限りわかりやすくして皆さんとシェアしたいと思います!
記事の信頼性
ユウスケ 理学療法士
理学療法士として臨床経験14年目/運動や姿勢と身体の痛みが専門でMSI(MovementSystemImpairmentSyndromes)コンセプトと出会い4度渡米/Twitter(ユウスケ | 筋トレ怪我ケガゼロプロジェクト)にてフォロワー約14000人/臨床業務とともに現在もMSIコンセプトの講師やアシスタント、各種イベントに精力的に参加している。
noteでは、トレーニー向けのBIG3のケガ予防、トレーニングに役立つ機能解剖学の記事を中心に書いていますので良ければ覗いてみて下さい!
足関節/足部の基礎
足関節とは、下腿と後足部にある関節で脛骨/腓骨と距骨の間の距腿関節と距骨と踵骨の間を距骨下関節(今回の主役)で構成されています。
距腿関節は主に底屈、背屈を、距骨下関節は主に回内、回外の運動を担っています。
この2つの関節が、いわば足関節の主要構造です。
足部とは、後足部、中足部、前足部からなり後足部と中足部の間はショパール関節、中足部と前足部の間はリスフラン関節となります。
そしてもう1つ覚えておいて欲しいのが、足部のアーチです。
アーチには横アーチと外側縦アーチ、内側縦アーチがあります。
足のアーチには、主に…
① 衝撃吸収
② 推進期の力の伝達効率の向上
の2つの機能が備わっています。詳細は割愛しますが、簡単にいうと空気圧を調整できるタイヤのような機能です。
距骨下関節の基礎
距骨下関節(subtalar joint:ST関節)とは、その名の通り距骨の下面と踵骨の上面の接する場所です。
そして踵骨は、軟部組織を介して床面と接しています。
距骨下関節は、機能的に足部と下腿との連結部でありこの部位の機能的な問題は、足部と下腿への影響します。
関節面について
距骨下関節には、3つの関節面(前、中、後)が存在します。
距骨を外した状態で全ての関節面が上方を向いており、後足部の支持性を中心に担うための形状である事が理解できます。
田中ら1)の研究によると、この関節面には5つのタイプがあり、解剖学書に載っている前/中/後が全て分離したタイプ(Separate Type )は36%、前/中が連続しているタイプ(Continuous Type)が40%あるそうです。
靭帯について
特に覚えておいて欲しい靭帯は底側踵舟靭帯で、スプリング靭帯と言われ踵骨と舟状骨の間を張っており回内位で靭帯性に荷重を受ける大切な場所となります。
関節面と適合性について
距骨と踵骨の関節面については、ST関節の動きによって適合性が変化します。
特に関節面の前方部分では距骨頭が踵骨前 /中距骨関節面,舟状骨の距骨頭に対する関節面、底側踵舟靱帯と臼蓋様の関節窩と関節を形成します。
文字で言うとわかりにくいので、図を見て下さいね!
そしてこれらの関節面は、ST関節回内位では距骨頭が底側踵舟靱帯の方へ移動し靭帯性の支持となり剛性が低下します。
逆に回外位では距骨の前踵骨関節面が踵骨の前距骨関節と接し骨性支持となり剛性が高くなります。
この回内すると剛性が低下、回外すると剛性が高くなることはどちらも重要な機能と言えます。
しかしいわゆる扁平足などで慢性的に回内足である場合には、常に靭帯性支持となりいわば空気の抜けたタイヤであり、その柔らかい足を支えるために必要以上に筋肉が働いたりしなければいけなくなります。
距骨下関節が回内し内側縦アーチが低下した扁平足では、足が疲れやすくなると言うのは納得できます。
逆にハイアーチで硬い足(rigid foot)の方は、足部の剛性が非常に高いままで衝撃を吸収できなかったり、回内の可動性低下を膝関節で代償するような戦略をとる方もいます。
ですので、それぞれの足の状態にあったケアが必要ということになります。
後距骨関節面(踵骨)と距骨
荷重下で後距骨関節面は床面に対して45°の傾きを持ちます。これは頸椎の関節面の傾きと似ており、回旋すると同側への側屈を伴うカップリングモーションに似ています。
距骨が可動し距骨下関節が回内すると、距骨の内旋が起こり外方へ傾斜します。逆に踵骨が可動し距骨下関節が回内するともちろん距骨は動きません。実はこの同じ回内の動きでも距骨側が動くのか?踵骨側が動くのかによって距骨より近位への影響は異なります。
頭側(上方)から見るとこのように距骨が可動し回内する事で、距骨は内旋の動きが認められます。これは斜めに関節面を持つ関節の特徴です。
踵骨と距骨と下肢アライメントの多様性(前額面上と矢状面上)
先ほど少し触れましたが、距骨下関節の動きがどのように下腿へ波及するかは、踵骨の傾きの影響を受けます。
例えば、同じように距骨下関節が回内していても…
図のAは距骨下関節が回内し、踵骨の外側を優位に接地しているため、下腿が外側へ傾斜しています。
図のBは距骨下関節が回内し、踵骨の内側を優位に接地しているため、下腿が内側へ傾斜しています。
このように、距骨下関節(踵骨と距骨)と、踵骨の傾斜や空間的な位置関係によって足部/足関節/下腿のアライメントというのは多様に変化します。
また踵骨のアライメントの影響は、前額面だけではなく矢状面上でも起こります。
踵骨は適切なアーチを維持している場合、約20°くらい上方へ向いています(図左側)。その上で距骨や固いの骨が垂直にのっています。
しかしアーチが何らかの原因で崩れた場合には、踵骨の傾斜はなくなり踵骨と距骨は前方へ回転し、結果距腿関節が底屈位となります(高齢者では距腿関節の可動性がなく下腿が前傾する場合もあります)。
難しい話ではありますが、簡単にポイントをまとめると…
ポイント
① 距骨下関節の回内外の動きにより足部の剛性が変化する点
② 距骨下関節の後距骨関節面は45°の傾きでカップリングモーションを持つ
③ 距骨と踵骨のアライメントにより下腿への影響には多様性がある
このように踵骨のアライメントというのは距骨とその上に存在する下腿のアライメントに非常に大きな影響を与える事が理解できます。
前回記事にてスクワットとニーインについてまとめました。
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スクワットでは踏み圧が足底の内側優位になり、内側縦アーチが低下することで、中足部に内向きの回転力が起こります。
内向きの回転力は、踵骨を内側へ傾斜させ回内運動が起こります。この回内運動が適切に起こることで下腿が内側へ傾斜することを防ぐ事ができます。
今回距骨下関節の機能解剖学を学びましたが、改めて距骨下関節を含む足関節の可動性の重要性を理解できたんではないでしょうか?
1)田中健太郎,澤出純明,他 :踵骨距骨関節面の形態変異について Ⅰ一現代日本人資料を用いた基礎形態学研究一.Anthroporogical Science,2004;112:85- 100.