専門家/トレーニー

サイドレイズで肩が痛くならない方法【肩甲骨と上腕骨の位置関係を比較】

ロニ子
三角筋をもっと発達させたい!けど肩を痛めたくない!

 

そんなお悩みを解決します。

 

本記事の内容

目次

記事の信頼性

ユウスケ 理学療法士

理学療法士として臨床経験14年目/運動や姿勢と身体の痛みが専門でMSI(MovementSystemImpairmentSyndromes)コンセプトと出会い4度渡米/Twitter(ユウスケ  | 筋トレ怪我ケガゼロプロジェクト)にてフォロワー約13000人/臨床業務とともに現在もMSIコンセプトの講師やアシスタント、各種イベントに精力的に参加している。

 

サイドレイズを「より安全に」、「より効果的に」行うには、ここに記載してある運動学的知識が必要不可欠です。なぜならサイドレイズは、トレーニーにとって最もポピュラーな種目でありながら、最も難易度が高い種目の1つでもあるからです。肩を痛めたくない、三角筋をより発達させるためにサイドレイズを続けたい方は、安全性と効果を両立するためのヒントをここに記載しておきます!

 

三角筋の解剖学

三角筋解剖学

三角筋の肩甲棘部は肩甲棘から、肩峰部は肩峰から、鎖骨部は鎖骨の外側部の1/3からそれぞれ起始し肩関節を覆う様に外下方へと走り上腕骨三角筋粗面に停止する。運動は肩関節を支点にして肩甲棘部が上腕を伸展・内転・外旋させ、肩峰部が上腕を外転させ、鎖骨部が上腕を屈曲・内転・内旋させる。支配神経は腕神経叢の腋窩神経レベルがC(4)・5・6である。

出典:ウィキペディアフリー百科辞典より

 

鎖骨部→前部

肩峰部→中部

肩甲棘部→後部

 

そして三角筋の前部はプレス系種目後部はプル系種目において動員されやすく、中部を発達させるためにはサイドレイズのような肩関節の外転運動(注:この記事のサイドレイズは回旋運動を伴わない外転運動とします)を行う種目が特に重要となります。

 

しかし肩関節の構造上、非常に運動自由度が高いため、やる人によって動かし方のバリエーションが多い種目です。

 

今回は理解をしやすくするために肩甲骨と上腕骨の前額面上の動きに着目して話を進めていきます。

 

三角筋中部に効かせるためには?

筋を最大限発達させるためには、筋肉に負荷(重さ)をしっかりのせることと、筋が伸びた位置から最大限縮む位置(厳密には構造上の干渉などの影響があるため可能な範囲)まで収縮させることが大切です。

肩関節は肩甲骨と上腕骨が連動して動くことで約180°(上腕骨 120° 肩甲骨 60° の約 2:1の割合)外転出来ます。これを【肩甲上腕リズム】と言います。

 

肩甲上腕関節(上腕骨)のみでの生理的運動は約120°が限界なため真の最大短縮位はこの角度となります。

 

しかし個人差はありますが、肩甲上腕関節は約60°を超えたあたりからは、大結節の肩峰への衝突を避けるために外旋運動(図の赤丸部分)が必要となってきますので、外旋運動を伴わない純粋な外転のみの動き(サイドレイズの動き)は60°〜90°くらいだと思います。

肩峰下、烏口肩峰アーチ

肩峰と上腕骨の間にある空間(肩峰下)には、主に棘上筋肩峰下滑液包が存在し、その周辺の構造体は関節構造、関節運動の異常も含め、かなり多様性があるので実際には肩甲骨の動きを伴わずに肩甲上腕関節を60°外転するだけでも、肩峰下に接触圧が高まる人もいれば、90°外転しても高まりにくい人もいると思います。

 

ここが肩関節の難しい点ではあります。

 

一般的にはサイドレイズでは約90°外側へ挙上(見かけ上の外転運動)しますが、そっちの方が負荷がのせやすい理由は上腕骨に対する力のかかり方にあると思います。

人間の身体は、かかる力に対して垂直方向に力を出した方が力が発揮しやすくなります。なのでダンベルサイドレイズの外転90°付近が三角筋にとっては一番力が発揮しやすいおいしい部分と言うことになりますね(もちろん中級者以上になるとダンベルサイドレイズでもあげ始めから外側へ遠くを回るような軌道にすることで全可動範囲三角筋に上手く負荷をのせることも可能です)。

 

ですので90°外転することは三角筋の中部にかける負荷を考えると必要な可動範囲で妥当と言えます。

 

あとは肩甲骨がどのような挙動をするかによって安全、危険など色々なパターンが予測できます。

ここからは見かけ上の外転運動(上腕骨の位置)だけではなく、肩甲骨と上腕骨の相対的な位置関係に注目してみましょう!

 

肩関節にとって危険なサイドレイズとは?

肩関節にとって危険なサイドレイズとは、肩峰下の接触圧を高めるような肩甲上腕関節の過剰な外転運動によるものです。

 

肩甲上腕関節の生理的運動範囲は約120°と言いましたが、そして外旋運動を伴わないサイドレイズ(外転運動)では約60〜90°が限界で、この範囲を超えて動いているものに関しては過剰可動性(亜脱臼ほどではないけれど組織に負担をかけるような不安定性)である可能性があります。

例えば肩甲骨を全く動かさず、外旋せずに、外転90°以上到達している場合(上図左側)にはこれは過剰な可動性であり上腕骨頭が生理的範囲を超えて動いている可能性があります。

 

外転120°に到達していなくても、上図右側の場合もそうです。これは見かけ上90°外転位に見えますが、肩甲骨が下方回旋位のため、肩甲上腕関節のみで見ると過剰な外転運動が起こっているケースです。

 

このサイドレイズでは確かに三角筋を非常に短い位置まで動員できるために、かなりスクイーズ出来る位置ですが肩関節にとっては非常に危険です。

 

肩関節にとって安全なサイドレイズを目指している方は次のパターンが比較的オススメです!

 

肩関節にとって安全なサイドレイズとは?

 

肩関節に安全なサイドレイズとは、肩甲骨を含む外転運動(肩甲上腕リズム)図左側によるものです。図右側は開始位置からのイメージ。

 

仮に外転90°までを、肩甲骨30°+上腕骨(肩甲上腕関節)60°=90°で行えば肩甲上腕関節の生理的な範囲を超えずに外旋せずとも90°外転(上腕水平位)が可能です。

 

簡単に言うと、自然な肩甲上腕リズムを損なわないような外転ですね。

 

ロニ子
でもサイドレイズの時に肩甲骨を動かすと僧帽筋に負荷が逃げるからダメってあのYouTuberも言ってたよ!

 

あくまでも肩甲骨を上方回旋させるのは、僧帽筋ではなく、前鋸筋である方が良いと私個人的には思います。そして前鋸筋を上手く使うためには、腕を外転することと、肩甲骨面で遠くへ伸ばすような(大きな円弧を描くような)意識が大切だと思います。

三角筋、サイドレイズ

三角筋を最大限収縮することだけを考えたサイドレイズは、【肩甲骨を下制、下方回旋】して固定し、肩甲骨を動かさないように外転で間違いありません。

 

そのような方法をYouTubeでも良く見ますが、あまりにもその意識が体に定着している場合には肩甲骨を少し動かしても良いくらいで思っておくと良いと思います。

 

ロニ子
「じゃ肩甲骨もっと動かせばいいんじゃね?」

 

そう思う方もいるかもしれません、確かに肩関節の負担を考えると肩甲上腕リズムを維持することが最も重要ですが、三角筋に負荷をのせることを考えるとあまりに肩甲上腕関節の可動範囲が狭くなり過ぎる場合がありますのでメリット、デメリットを考慮した上で判断するのが良いと思います。

 

ですので肩甲骨は全く動かさないよりも多少の上方回旋は許容しながら外転することで上腕骨の過剰な運動を抑制しながら三角筋にも負荷を乗せることが出来ます。

 

もし肩関節に不安がある、サイドレイズで肩を痛めたことがある方は、肩甲骨の上方回旋を促すようなエクササイズをすることも大切です。

実際三角筋が強力に収縮するためには、下方回旋するよりも、肩甲骨が前鋸筋により下方回旋しないように安定している中で収縮する方が筋の付着部が安定し、より強い力を発揮できると思います。

 

まとめ

肩甲上腕リズムを適度に維持しながらも、三角筋の中部を可能な範囲で刺激を入れていく。

 

サイドレイズに至っては安全性を維持するためにはあまり大きすぎる可動範囲は関節への負荷となるので慎重さも必要です。

 

あと純粋な外転の動きに、内旋や外旋の動きを入れていくか否かについては非常に難しい調整となります。

 

上腕骨についても、大腿骨と同様に骨の捻転などの構造的多様性もあり、その辺りが内外旋を微調整する為の鍵となって来るかもしれません。

 

これはあくまでも個人的見解なので、試しながら自分にとって関節に負担の少ないサイドレイズを完成させていきましょう!

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