そんなお悩みを解決します。
目次
本記事の内容
・肩こりの原因は?
・肩こりの対処法は?
・肩こりが楽になるストレッチと運動
出典:厚生労働省HPより
平成22年度厚生労働省の調査からもわかるように【肩こり】の症状を感じている人はとても多いです。特に女性は人口千人当り約130人がその症状を感じているとのこと。まず肩こりを感じていることはあなた一人だけではなくごく一般的な症状であるということを理解しましょう。
肩こりの原因は身体だけではなく心理的側面等多因子的で、原因が特定しにくい症状ではありますが、ここに記載してあることを実践すれば肩こりを解消する手助けになると思います。また原因となる生活習慣の改善も出来て肩こりになりにくい身体を手に入れることが出来ます!
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記事の信頼性
ユウスケ 理学療法士
理学療法士として臨床経験14年目/運動や姿勢と身体の痛みが専門でMSI(MovementSystemImpairmentSyndromes)コンセプトと出会い4度渡米/Twitter(ユウスケ | 筋トレ怪我ケガゼロプロジェクト)にてフォロワー約12000人/臨床業務とともに現在もMSIコンセプトの講師やアシスタント、各種イベントに精力的に参加している。
肩こりの原因は?
現代の生活習慣における肩こりの多くの原因は、デスクワークやスマホなどの不良姿勢を長時間取り続けることにあります。
また精神的な緊張を伴う作業や、ストレスを伴う環境での作業はより痛みの感じやすくします。
不良姿勢を長時間続けることで、首の筋肉は長時間緊張しています。
重たい買い物袋を持ち続けると腕が疲れてきますよね?頭の重さを感じることはあまりありませんが実際に首の筋肉でもそれと同じことが起こっています。
頭の重さは体重のおよそ10%と言われています。体重が50kgの方であれば約5kgです。
その頭を前へ30°傾けると3倍以上の約18kgの重さが首に加わります。
これらを支えているのが、首の筋肉ということになります。
結論から言います!頸椎や首の筋肉に負担をかけない為のポイントは、以下の3点です。
ポイント
頭部の重み
筋の収縮
肩から下方への牽引力
これらのポイントを頭に入れて聞いて頂けると納得できると思います。
注目!肩こりの原因の筋肉は?
実は注目すべき筋肉が2つあります。その筋肉が【肩甲挙筋 けんこうきょきん】と【僧帽筋 そうぼうきん】です。これらの筋肉は頸椎から肩甲帯へと付着しています。
メモ:頸椎への作用
僧帽筋:後頭骨と棘突起に付着するため、頭部を伸展したり、頸椎を同側へ側屈・反対側に回旋します。
肩甲挙筋:頸椎1〜4の横突起に付着するため、頸椎を同側へ側屈・回旋したりします。
普段は頸椎や肩甲帯を動かす筋肉ですが、実は姿勢が悪いとこれらの筋肉までもが頸椎を支えるために過剰に働き“肩こりや首の痛み”を引き起こします。
肩甲挙筋と僧帽筋は肩甲帯と頸椎に付着すると言いましたが、実は肩甲帯が硬く固定されていればより頸椎を引っ張ります。
肩甲帯が動きにい状況というのは、肩甲帯に付着する筋肉が硬くなったり、腕の重みがかかったりすることで起こりやすくなります。
これが【肩から下方への牽引力】ということです。
そして厄介なのは、姿勢によってこれら2つの筋肉の作用は変化するということです。
良くある頭が前方へ突き出たような姿勢ですが、良い姿勢(左側)に比べて右側はこれら2つの筋肉(青:僧帽筋 赤:肩甲挙筋)が前方へ偏位する頭を後方へ引っ張り、上位頸椎をより伸展する方向に引っ張っているのがわかります。
肩甲骨は前傾位で固定されている場合に、筋肉の力が直接頸椎を引っ張る力へと変換されます。
このような姿勢と筋肉の作用の悪循環により肩こりや首の痛みが発生します。
【肩甲挙筋】と【僧帽筋】の影響を確認するテスト
これらの2つの筋肉が頸椎への影響を知る方法として【肩甲帯挙上テスト】があります 1)。
肩甲帯挙上テスト
[方法]
① 座った姿勢で頸椎を左右へ回旋します(関節の動く範囲と痛みの度合いを確認)
② 肩甲骨(肩甲帯)を他動的に挙上し肩周囲の筋を完全にリラックスします
③ その状態でもう一度頸椎を左右に回旋します(関節の動く範囲と痛みの変化を確認)
これで痛みが軽減したり、関節が動きやすくなった場合にはこの2つの筋肉が頸椎に与えている影響が大きいというのがわかります。
VanDillen,LRらの報告によると肩甲帯を挙上することで約80%の方の回旋中の痛みが緩和/軽減していたそうです1)。
これらの事実でわかることは肩甲骨の動きを改善することと、これら2つの筋肉をストレッチすることでより肩こりや首の痛みが改善されるかもしれないということが理解できます。
肩こりの対処法は?
ズバリ肩こりの対処法はストレッチだけでは改善しません。身体と環境、精神的ストレスの問題を解決してこそより効果的です。
特に以下の3点は今すぐ改善できることなので実践しましょう!
・座っている時間
・座っている姿勢
・座っている環境
どれだけ良い姿勢をしても、長時間座っているとほとんどの方の姿勢は崩れてきます。ですので最も大切なことは座っている時間を短縮することです。
長時間の座位は図のように座り始めは左側でも、時間の経過とともに右側の姿勢へと移行します。
この崩れが起こるキーポイントは骨盤です。骨盤が後傾(後に傾く)することで胸腰椎が屈曲し前方頭位となり、特に上位頸椎の過伸展(頭が上を向く)が連鎖的に起こります。
こうなると先ほども言った通り、肩甲挙筋や僧帽筋は頭が前に行くのを引っ張らないといけなくなり、上位頸椎を伸展し肩こりや首の痛みが起こりやすくなります。
いかに骨盤を立てた状態をキープしやすくするかも大切です。では座っている姿勢をどのように楽にするかをポイントをまとめます。
座っている姿勢の修正の3つの重要ポイントは?
ポイント
① 足が着いているか?
② 骨盤が立っているか?
③ 腕の重みが軽減できているか?
この3点です。
実は座っている姿勢は足を中心に決めたら、そこから骨盤や上半身と腕の位置を決めていくと方法が簡潔です。そしてデスクワークをする方は、モニターの位置はその姿勢に適した位置にしましょう!
今回は足元から姿勢を決めていきましたが、どこを基準に姿勢を作るかはその作業環境によって決めます。椅子の高さ調整が出来ない場合は、しっかり深く座ってから足が届かない場合は、足台を置きます。
必ず上記3点のポイントをクリアできるようにあの手この手で工夫しましょう。
最後に腕の重みを軽減することは、【肩から下方への牽引力】を軽減することに非常に有効です。肩甲骨が動きやすい状態を作れるかを決定する大切な要因でもあります。出来ればアームレストを活用するか、机に深く椅子を入れて腕を支える筋肉をリラックスできるような環境を作ってあげましょう。
自宅やオフィスでデスクを選ぶ際は昇降式を選ぶと自分好みの高さ調整が可能なので、以下に昇降式で機能的なデスクを選んでおきました参考までに。
また座面調整、アームレスト可動が可能なチェアもオススメを挙げておきます。GTレーシングはゲーミングチェアですが、私自身使用しています。コスパも非常に良く作りもしっかりしています!170cm以上のM〜L寸の男性なら幅も問題ないでしょう。女性は特に椅子の幅が広すぎるとアームレストに肘が置けない可能性もあるので必ず確認しましょう!
肩こりが楽になるストレッチと運動
エクササイズのポイントは3つ!
エクササイズの3つのポイント!
- 土台となる腰椎と胸椎の可動性を改善する
- 肩甲骨周囲の可動性を改善する
- 首(頸椎)の動きを改善する
床上でのエクササイズ一覧
- 仰向けでの胸椎の屈曲と伸展
- 横むきでの胸椎の回旋
- キャット/キャメルエクササイズ
- 四つ這いでのロックバック運動
- 四つ這いでの頸椎の運動(屈曲/伸展/回旋)
仰向けでの胸椎の屈曲と伸展
座布団やクッションを使用するとより胸椎が伸びやすくなります。
横向きでの胸椎の回旋
骨盤と腰椎は固定し、胸をしっかり開きながら胸椎を回旋します。ストレッチポールがない場合はクッションで代用可能です。
キャット/キャメルエクササイズ
胸椎を屈曲する(ラクダのポーズ)と胸椎を伸展する(ラクダのポーズ)、肩甲骨も開いたり閉じたりすることで胸椎と肩甲骨周囲が非常にほぐれます。
四つ這いでのロックバック運動
四つ這いでお尻を踵に近づける運動です。肩関節の屈曲と肩甲骨の上方回旋運動により肩甲骨周囲の可動性を高め首の安定性を改善します。ダメなパターンとしては頸部が伸展。
四つ這いでの頸椎の屈曲
頸椎が屈曲せず前方へ頭部が動いてしまう(前方並進運動が優位)のが悪いパターンです。良いパターンはアゴを引き上位頸椎から下位へ巻き込むような頸椎の動きをします。
四つ這いでの頸椎の伸展
上位頸椎のみが伸展してしまうのが悪いパターン、上位の動きとともに下位へバランス良く伸展していくのが良いパターンです。
四つ這いでの頸椎の回旋
頸椎の回旋と伸展の組み合わせ、回旋と屈曲の組み合わせが起こるのがダメなパターンです。頭のテッペンからお尻まで一本の軸を通してそこで回旋するのが良いパターンです。
座ってのエクササイズ一覧
- シュラッグ
- チンリトラクション
- 頸椎の側屈
- 頸椎の回旋
- 頸椎の屈曲
- 頸椎の伸展
- 僧帽筋と肩甲挙筋のストレッチ
- 頸椎の前面筋の等尺性運動
シュラッグ
肩をすくめることで肩甲骨の挙上と下制の可動性を改善します。また凝り固まった僧帽筋や肩甲挙筋の血流を改善しリラックス出来ます。
チンリトラクション
アゴを後方へ引き込み頸部の内在筋を刺激したり、前方頭位を改善します。
頸椎の側屈
頸椎の側屈と回旋、側屈と屈曲の組み合わせはダメなパターン、耳を肩に近づけるように側屈しましょう。
頸椎の回旋
頸椎が回旋伸展したり、回旋屈曲するのが悪いパターンです。頭のテッペンからお尻の先まで軸を作り回旋するのが良いパターンです。
頸椎の屈曲
頭が前方へ移動する(頸椎の前方並進運動)ような屈曲はダメなパターン。アゴを引くところから上位→下位頸椎へと順に屈曲していきましょう。
頸椎の伸展
上位頸椎(後頭骨と第一頸椎)の伸展が優位なダメなパターンです。上位頸椎〜下位頸椎まで上から順にバランス良く伸展していきましょう。
僧帽筋のストレッチ
左側の僧帽筋を狙う場合:左手で椅子を持ち左側の肩甲骨を固定します。頸椎は屈曲/左回旋/右側屈します。
肩甲挙筋のストレッチ
左側の肩甲挙筋を狙う場合:左手で椅子を持ち左の肩甲骨を固定します。頸椎を屈曲/右回旋/右側屈します。
頸椎の前面筋の等尺性運動
この筋肉はアゴが前方へ出るのを防ぐ筋肉です。テニスボールを使うことで頸椎のインナーマッスルを刺激して動きを改善していきます。
ストレッチと運動の目安とコツ
- 回数 10回
- セット 3セット
- ストレッチ種目は20〜30秒
- 運動を反復して関節を温めるように実施します
まとめ
肩こりや首の痛みは日々の生活習慣の中で起こります。
また3つのポイント、① 頭部の重み ②筋の収縮 ③肩から下方への牽引力を考慮して環境を整えたり、身体をケアすることが重要です。
僧帽筋と肩甲挙筋は肩甲骨から頸椎へ付着する為、肩甲骨周囲の筋肉の影響をダイレクトに頸椎に伝えるので注意が必要。
対処法は ①座位の時間を軽減する ②座位の姿勢を改善する ③環境を整えることが大切。1日多くの時間を費やすからこそ座っている姿勢についてはこだわるべき!です。
肩こり解消のエクササイズは、毎日3〜5種目を日々の習慣に落とし込んで実施します。
肩こりにはマッサージも効果的かもしれませんが、その場しのぎで本気で改善したいと思うならぜひ実践しましょう!
また首や肩にとって良さそうなガジェットやアイテムがあればこちらで紹介していきますね!Twitterでも毎日身体にとっても役立つ身体のケアや運動、解剖学や運動学の知識をシェアしています。もしよければフォローお願いしますユウスケ | 筋トレ怪我ケガゼロプロジェクト。
参考文献
1)Van Dillen, L. R., McDonnell, M. K., Susco, T. M., & Sahrmann, S. A. (2007). The immediate effect of passive scapular elevation on symptoms with active neck rotation in patients with neck pain. Clinical Journal of Pain, 23(8), 641-647.