一般向け 肩こり/腰痛

大人の腰痛体操〜自宅で出来る股関節ストレッチ〜

ロニ子
腰痛を治したくて、「腰痛体操」を検索したら色んな方法が出てきたんだけど結局どれがいいのかしら?

 

そんなお悩みを解決します。

目次

本記事の内容

・腰痛予防と改善には股関節がポイント!

・腰椎と股関節のメカニズムを知ろう!

・股関節ストレッチと運動 実践編(全11種目)

 

今回は腰痛と股関節について論文の内容や解剖学/運動学的知識を駆使しながら解説します。そして基礎的な話をテキストベースで、後半には股関節の機能を高める腰痛体操を動画で紹介いたします。これを読めば腰痛について理解が深まり、あなたの腰痛予防や改善にきっと役立つはずです。

 

この記事は5分程度で読めます!

 

記事の信頼性

ユウスケ 理学療法士

理学療法士として臨床経験14年目/運動や姿勢と身体の痛みが専門でMSI(MovementSystemImpairmentSyndromes)コンセプトと出会い4度渡米/Twitter(ユウスケ  | 筋トレ怪我ケガゼロプロジェクト)にてフォロワー約12000人/臨床業務とともに現在もMSIコンセプトの講師やアシスタント、各種イベントに精力的に参加している。

 

現役バリバリの臨床家です。まだまだ知識不足は否めませんが、自分の持つ知識が誰かの手助けになれば嬉しいです!

 

腰痛予防と改善には股関節がポイント!

 

本題に入る前に少し知識を整理させて下さい。まず前提として腰痛と言っても色々なタイプがあります、経過による分類として

 

参考

・急性:〜1ヶ月

・亜急性:2〜3ヶ月

・一過性

・再発性:症状は、12か月間の内半分未満で、1年に複数のエピソードで発生します。

・慢性:症状は、12か月間の内半分以上であり、単一または複数のエピソードで発生します。

 

また腰痛の分類として、

 

参考

・腰椎の運動が制限されるタイプ

・腰椎が不安定なタイプ

・動きの協調性が悪いタイプ

・足への放散痛があるタイプ

 

と様々です。

 

今回は急性腰痛ではない、どちらかと言えば「普段少し腰が痛む時があるけどなんとかしたい」、「もう腰痛にはなりたくない」という方向けの記事となります。ぎっくり腰などの急性腰痛の方は、まずはコチラの記事を参考にして下さい。

 

参考ぎっくり腰 | 急性腰痛症〜原因/対処法/再発予防〜

続きを見る

 

では本題に入ります!

 

腰痛と股関節の関節可動域(以下ROM)の制限には関連があるの?

 

結論から言います、2019年のAvman MA 1)らの研究によると

 

・股関節のROM制限と非特異的腰痛との関連性を支持する証拠は非常に質が低い。

・股関節の内旋のROMの制限は、非特異的腰痛と有意な関連が認められた唯一の運動障害であったが、質の低いエビデンスである為注意が必要。

 

実は非特異的腰痛(原因が特定しきれない腰痛)というのは、とても色んな要素が絡んでいて筋力やROMといった身体の運動に関わる機能とはあまり関連がないのではないかというのが現在の科学的な見解です。

 

ただし股関節のROMを改善するためのストレッチや運動が効果がないというわけではありません!

 

臨床の現場でも個々のケースを見ていると、股関節の機能(ROMや筋力)の改善により腰痛が軽減している例を多く経験します。

 

ただし伝え方に誤りがあってもいけませんのであえてここでは一つの研究内容を紹介しました。なので「股関節をほぐせばスッキリ腰痛解消!!」などと謳う誇大広告には注意して下さい。

 

そのような前提の中でなぜ私が股関節のストレッチ(運動)をオススメするか?

 

それは腰痛の予防や改善には股関節の柔軟性や筋パフォーマンスが必要だからです!

 

ロニ子
言い切ったわね!ならしっかり説明してもらうわ!!3分でお願い!

 

実はこの股関節の柔軟性や筋パフォーマンスを上げるには、腰椎もセットで考えなくてはいけません。むしろ腰椎を考えずに股関節のストレッチをすることはかえって良くありません。

 

腰痛体操、股関節、運動

 

また私自身も現場で腰痛の方を見る機会もありますが、そのような人達のほとんどが股関節を上手く使えていません。簡単に言うと、股関節が仕事できない分を腰椎が補ってしまっているわけです。

 

股関節の機能を改善して仕事ができる量を増やし、腰椎の仕事を減らそうというのが今回の股関節ストレッチのコンセプトです!

 

それはまさに怠ける社員を、やる気の満ちた社員へと復活させるプログラムです!

 

ではそのメカニズムを説明していきます。

 

腰椎と股関節のメカニズムを知ろう!

 

腰椎は仙骨を含む骨盤を介して股関節と連続しています。運動においても関節が隣接している為、股関節と腰椎は骨盤を介して運動が連動しています。

 

腰痛体操、股関節、運動、腰椎、骨盤大腿リズム

 

・股関節を屈曲→腰椎は屈曲(骨盤後傾)

・股関節を伸展→腰椎は伸展(骨盤前傾)

 

竹井らの研究によれば骨盤の後傾は屈曲運動においては全可動範囲の1/11の角度を担っている 2)。なので股関節が110°屈曲すれば骨盤は約10°後傾します。

 

よって機能的には…

 

・股関節は安定性と可動性が求められ

・腰椎はどちらかといえば安定性が求められます

 

ロニ子
良くある腰痛で腹筋や背筋を鍛えろってのはこういうことね!

 

そうだね、腹筋や背筋を鍛えることで腰椎が安定するようにして腰痛を軽減しようという考えに基づいている。
ユウスケ

 

実は腰椎が持つ安定性と言う機能と股関節が持つ可動性と言う機能が破綻した時に腰椎への負担が増えます。

 

腰痛体操、股関節、運動、骨盤大腿リズム

 

例えば、図右上をご覧下さい!股関節伸展が制限された場合には、そのROMを骨盤前傾↑と腰椎伸展↑が代償します。

 

次に図右下また股関節屈曲が制限された場合には、そのROMを骨盤後傾↑と腰椎屈曲↑が代償します。

 

隣接する関節はこのように一つの関節の動きが制限された場合には他の関節で補おうとします。ROMだけを見ていても一見同じように見えてもその動きは全く違うものであると言うことには注意が必要です。

 

ここでは屈曲と伸展のみを説明しましたが、他の関節でも同様の代償が起こります。代償運動の現れ方はその動作によって違いますがここでは細かい説明は省きます。

 

ロニ子
じゃとにかく股関節をスムーズに動かすような体操やストレッチが良いってことね、そうすることで腰椎への負担を減らしたり出来る!
そうだね!股関節の可動性をUPさせることと、あと忘れてはいけないのは、腰椎を安定させることも忘れずに!
ユウスケ

 

実際に股関節がスムーズに動かずに腰椎に負担がかかっているケースが多いですが、中には股関節が凄く可動性が高いにもかかわらず腰椎が動いてしまうケースもあります。

 

このような方は腰椎を安定化するエクササイズがオススメです!

 

ロニ子
股関節のストレッチは特にこの方向がオススメっていうのはあるの?
実はある研究で特異的腰痛と関連があった股関節の運動方向が一つあったんだ!
ユウスケ

 

実はAvman MAらの研究によると健康な方と比べると非特異的腰痛の方は【股関節の内旋】が有意に減少していたそうです。

 

腰痛体操、股関節、運動、内旋、外旋

 

内旋とは図の左側の動き、いわゆる内股の動きです。この内旋の動きに影響を与えている筋肉が、お尻の後ろ側にある筋肉です。

 

腰痛体操、股関節、運動、深層外旋六筋、後方滑り

 

臀部を後方から観察すると、表層には大臀筋、中臀筋があり、深層には深層外旋六筋(内閉鎖筋、外閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、梨状筋、大腿方形筋)と呼ばれる筋肉があります。

 

これらの筋肉は股関節の伸展外旋としての作用が主です。これらの筋肉が硬くなったり短くなると股関節の屈曲内旋の制限が出やすくなります。

 

また深層外旋筋は股関節のすぐ後方に位置しており、硬くなったり短くなったりすると股関節の屈曲運動に必要な大腿骨頭の後方への滑りを制限します。

 

結果股関節の屈曲がしにくくなり、代償的に腰椎が屈曲しやすくなります。

 

これらの動きは股関節屈曲を伴う姿勢や動作で特に腰椎への負担を増加させます。この腰痛の特徴は別名「屈曲型腰痛」とも言われています。

 

今回は特にお尻の後ろ側の筋肉をストレッチして股関節の屈曲と内旋のROMを改善したいと思います。また新たに獲得したROMで使われていなかった股関節伸展筋をしっかり使えるようなエクササイズも合わせて紹介いたします。

 

では実際にやってみましょう!

 

股関節ストレッチと運動 実践編(全12種目)

難易度は★で表しています。★〜★★★★★(★が5つは基本的には現在腰が痛くない方が予防目的で実施して下さい)

内旋ストレッチ

  • うつ伏せ(腹臥位)での内旋 ★
  • 仰向け(背臥位)での内旋 ★★
  • シンボックスでの内旋 ★★〜★★★(発展系を含む)
  • 四つ這いでの内旋 ★★★

 

うつ伏せ(腹臥位)での内旋

① うつ伏せの姿勢をとります ② 両側の股関節を同時に内旋します ③片側の股関節を内旋します(注:片側で行う時は骨盤が回旋しないようにしましょう!)*足首に重りをつけて行うとよりストレッチされます。

 

仰向け(背臥位)での股関節内旋

① 仰向けで両膝を立てます ② 片側の足をストレッチする側の膝に乗せて股関節を内旋していきます 注:骨盤が回旋しないようにしましょう!

 

シンボックスでの股関節内旋

① 両手を後方についた姿勢をとります ② 左右の膝を床につけるように回旋します 注:骨盤の回旋は多少入りますが、主に股関節で動かしていることを意識して下さい。

 

シンボックスについて股関節の内旋や外旋の動きを作るのに非常に効果的です、発展系がありますので、コチラの記事も参考にしてみて下さい!

参考コロナ/テレワーク/自粛生活の運動不足/身体の不調を解消する「SHIN BOX エクササイズ」

続きを見る

 

四つ這いでの内旋

① 四つ這い姿勢をとります ②左右の股関節を内旋します(片側のみでもOK) ③ その位置をキープしたまま臀部を踵へ近づけるように動かします(内旋位のまま股関節屈曲を反復しましょう) 注:内旋位での屈曲は股関節が硬い人や後捻股の方はわずかな内旋からでOKです

屈曲ストレッチ

  • 仰向け(背臥位)での屈曲 ★
  • 床に座っての屈曲 ★★★
  • ランナーズランジストレッチ ★★★★
  • 四つ這いでの屈曲 ★★

腰痛体操、股関節、運動、ストレッチ、股関節屈曲ストレッチ

仰向け(背臥位)での屈曲

① 仰向けになり膝を立てます ② ストレッチする側の膝を抱えて身体の方へ引きつけます ③ 3方向へストレッチします 注:骨盤があまり後傾し過ぎたりしないようにゆっくり抱えましょう

 

腰痛体操、股関節、運動、ストレッチ、お尻ストレッチ

床に座っての屈曲

① 図の左上のポジションをとります ② 体幹を前傾して臀部をストレッチします(図真ん中) ③ 後あしを伸展して骨盤と体を立ててより臀部をストレッチするポジションへ(図右下)

 

ランナーズランジストレッチ

① 膝を立てて足を前後に開きます ② 両手をつきながら体幹を前傾し股関節屈曲外転外旋位へ ③ 最後にしっかり胸を張ります

 

四つ這いでの屈曲

① 四つ這いの姿勢をとります ② お尻を踵に近づけるように股関節を屈曲します 注:股関節を屈曲する際に腰が曲がらないようにしましょう!

臀筋(お尻)の筋パフォーマンス改善

  • 両膝立て位でのヒップヒンジ ★★
  • 床での伸展 ★★★
  • スクワットのバリエーション ★★★★★

 

両膝立て位でのヒップヒンジ

① 両膝をついた姿勢をとります ② お尻を踵に近づけるように股関節を屈曲します *お尻で扉を閉めるようなイメージで行って下さい!

 

床での伸展

① 上図の姿勢をとります ② お尻を床に着けたり離したりします *お尻の筋肉がストレッチしたポジションで収縮します。

 

ディープスクワットの姿勢(ハムストリングスのストレッチ)

① 両足を肩幅に開きカエルの姿勢 ② 両手で足の外側を持ちます ③ 膝を伸ばしながら体を前傾します *腰椎を前傾位を保ったまま太ももの裏がしっかり伸びていればOK、膝は曲がっていてもOKです 注:この姿勢が取れない人は無理に行わないこと、腰痛がある人よりも予防向けです

ストレッチと運動の目安とコツ

  • 回数 10回
  • セット 3セット
  • ストレッチ種目は20〜30秒
  • 運動を反復して関節を温めるように実施します

床でエクササイズする時には、以下のようなマットを使用して頂くと運動の安全性やモチベーションもキープできます。一家一つヨガマットは必須アイテムです。Amazonのヨガマットはコスパも最高です!

  

まとめ

腰痛の原因は様々です。身体面と心理面、社会的側面までも含めて考える必要があります。身体を変えることで少しでも気持ちが前向きになったりすればそれが一番腰痛には効果的かも知れません。

 

今回は腰痛と股関節について解説しましたが、これらの運動をきっかけに少しでも痛みに支配されない、痛みを自分が治るまで管理しているという主体的な気持ちを持って頂ければ嬉しいです。

 

運動は無理せず、継続、自分が良いと思った物は取り入れて、これは合わないと思えば無理してする必要はありません。

 

すべての人に効く魔法のストレッチや運動はありません。その中であなたの痛みを少しでも楽にしてくれる運動を実践していきましょう。

 

参考文献

1)Avman MA, Osmotherly PG, Snodgrass S, Rivett DA : Is there an association between hip range of motion and nonspecific low back pain? A systematic review. Musculoskelet Sci Pract. 2019 Jul; 42: 38-51.

2)竹井仁 他,MRI による股関節屈曲運動の解析,理学療法学 第29巻第4号 113〜ll8頁 (2002年)

(注:ここに記載してある運動を行ったことによる症状の悪化や怪我等については当ブログ管理者は一切責任を負いませんご理解下さい)

 

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