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本記事の内容
目次
今回はスクワットにおいて膝の痛みの原因で最も起こりやすい失敗であるニーイン(膝の内側への崩れ)を解説します!
特に足関節のポイントについては、一般的に言われていることに加えて私の意見も踏まえて力学的な視点でニーインという現象を解説しています。まだまだ謎の多いニーインですが、その現象を再考するきっかけになれば幸いです!
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記事の信頼性
ユウスケ 理学療法士
理学療法士として臨床経験14年目/運動や姿勢と身体の痛みが専門でMSI(MovementSystemImpairmentSyndromes)コンセプトと出会い4度渡米/Twitter(ユウスケ | 筋トレ怪我ケガゼロプロジェクト)にてフォロワー約14000人/臨床業務とともに現在もMSIコンセプトの講師やアシスタント、各種イベントに精力的に参加している。
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ニーインとはどのような現象か?
まずスクワットを始めて間もない方は、そもそもニーインという言葉自体がわからないかもしれないので先に解説しておきます。
スクワットにおけるニーインとは、特にボトムからの挙上動作時に膝関節が外反(動作時膝関節外反とも言います)してしまう現象です。
膝関節が外反する事で、膝が内側に入るように見えることから、ニーイン(knee in,knee valgus)と言われています。
このニーインという現象は、慢性・急性のスポーツ外傷の原因としても考えられており私が専門とするMSI(運動機能障害症候群)でも脛骨大腿回旋症候群として分類されています。
膝関節は、荷重がかかり脚が踏ん張っている状態で捻られる(回旋)ようなストレスに弱いためこのようなニーインという現象はケガの要因とも言われています。
膝関節は、荷重に対応する関節でありながら、可動性も求められる為に非常に少ない接触面で適切に荷重を支えなけばならないので扱いが難しい関節です。
膝関節は、股関節と足関節に挟まれているのでそれらの影響を知る事が膝関節の痛みを解決する手がかりとなります。
ニーインと膝関節の運動学
ニーインの原因を大きくまとめるとこのようになります。もちろん体幹の問題もありますが今回は割愛させて頂きます。
ニーインの主な原因は先ほども言ったように膝関節自体よりも、隣接する股関節や足関節の影響を受けています。
股関節については、一般的に言われていることに概ね意見は一致しており。足関節の問題については僕自身もまだ悩んでいる途中ではありますが、現時点でこうなればニーインが起こりやすいんじゃないかと考えを今回まとめてみました(*賛否あると思いますので、あくまでも臨床家1人の意見として聞いて頂き再度考えるキッカケにして頂けると嬉しいです!)。
ニーインという現象は、大腿骨が内側へ、下腿は内側へ傾斜することを意味します。
大腿骨が内側へ崩れることを関節運動で説明すると、股関節内転と内旋の組み合わせの運動です。下腿の内側への傾斜については、足関節の運動の多様性があり必ずこうなると決め付けられません。
一般的には足部、足関節が過度に回内する事(いわゆる扁平足)がニーインの原因と言われそれが浸透していますが、実は私が現場でみる方は足部、足関節が過度に回内していても下腿が外側へ傾斜している方も多くいます。
ニーインと股関節
股関節後外側筋パフォーマンス
ニーインでは股関節が内転/内旋しやすくなっているのが特徴であり、それらを制御している筋肉のパフォーマンスが低下もしくは上手く使えていない事が考えられます。
股関節の内転/内旋運動を制御する筋肉は、股関節を外転/外旋する中臀筋中部〜後部線維や大臀筋、深層外旋筋となります。
特に股関節の後外側を覆っている筋肉で非常に重要な筋肉です。
これらの筋肉が、運動強度に対して相対的に弱化していたり、延長(筋肉が長すぎる事で起こるパフォーマンス低下)していると股関節が内転/内旋してしまいニーインが起こります。
もちろん大内転筋などの股関節伸展作用を強く持つ筋肉が強い方などは、テクニカルな面であえてニーインを用いたスクワットをしている場面も見かけます。
大腿骨の前捻角
またニーインが起こりやすい原因は、筋肉のパフォーマンス以外にも大腿骨の形態も関与します。
大腿骨の前捻とは、大腿骨頭の前方への捻れです。正常で約15°捻れています。これが過剰になると、股関節の内旋可動域が大きくなりこのニーインが起きやすくなります。
特に過度な前捻は、女性に多いことから女性でスクワット時にニーインする場合には、筋肉の問題だけではなく骨の形態を確認する事が大切です。
実際に前捻角が過剰である場合には、それを治すことは出来ませんが自分の股関節の形態を知った上で、他の対処できる部位をしっかりケアしてあげる事が重要となってきます。
あと過度な前捻がある場合は、多少のニーインは許容すべきであると思います(ただし膝の適切な位置関係は保っておきましょう)。
(前捻角などの骨の捻れを治せると言い切る、トレーナーや施術者がいる場合にはすぐその場から立ち去りましょう!)
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内反股
そしてもう1つ骨の形態として頭の片隅に入れておいて欲しいのが、【内反股 ないはんこ】です。
内反股は、大腿骨の頸体角が正常で125〜130°であるものが、それより小さい頚体角を言います。
内反股であれば大腿骨が内側へ入りやすくなるため、ニーインしやすくなる1つの要因となります。
しかし頚体角は実際にどれくらいの角度があるのかを正確に知るためには、画像初見による確認が必要ですので、立った姿勢で股関節が内旋していないにも関わらずX脚である方はそうかもしれません(その程度で知っておいて下さい)。
この内反股についても、骨の形態的な問題ですので徒手的に治すことは不可能です。
ニーインと足関節(足部を含む)
ニーインについてもう1つ知っておかなければいけないのが、足関節の問題です。
スクワットのような荷重下において足部、足関節は接地面として非常に重要な役割(接地面の感覚フィードバック、荷重下での関節角度の調整etc…)を果たします。
足関節とは、下腿と後足部にある関節で主に距腿関節、距骨下関節で構成されます(書籍により定義は少し異なる場合がありますご了承下さい)。
距腿関節は主に底屈、背屈を、距骨下関節は主に回内、回外の運動を担っています。
特にこの上記2つの関節は、個々に単独で動かすことは非常に難しく、連動した動きも理解しないといけません。
足部とは、後足部、中足部、前足部からなり後足部と中足部の間はショパール関節、中足部と前足部の間はリスフラン関節となります。
大まかな役割としては…
メモ
後足部→支える
中足部→衝撃吸収
前足部→蹴り出す
そしてもう1つ覚えておいて欲しいのが、足部のアーチです。
アーチには横アーチと外側縦アーチ、内側縦アーチがあります。
足のアーチには、主に
メモ
① 衝撃吸収
② 推進期の力の伝達効率の向上
の2つの機能が備わっています。詳細は割愛しますが、簡単にいうと空気圧を調整できるタイヤのような機能です。
特にスクワットのニーインでは内側縦アーチの機能が重要となってきます。
では本題にいきます!
立位で内がえしの角度が大きい+内側縦アーチが低下しやすい
まず結論から言います、ニーインしやすい足部/足関節の人の条件は【立位で内がえしの角度が大きい】+【内側縦アーチが低下しやすい】ことです。
え?と思いますよね。なんとなくニーインする人は外がえししているような気がしますよね。そして上記の2つが同時に起こり得るのも一般的には考え難いと思います。もちろん現段階で確実にこうだと言えるものではありませんが、メカニズムを考えると個人的には納得できるものがあります。
【立位で内がえしの角度が大きい】については、肥田ら1)の研究から参考にした知見となり片脚スクワットのニーインと関連する項目です、【内側縦アーチが低下しやすい】については実はこれ単独ではニーインは起こり難いのではと臨床の経験から考えています。
実はこれらの組み合わせが起こるパターンというのが、個人的には最もニーインが起こりやすい足部/足関節の問題と捉えています。
ニーインの下腿の動きに着目していくと、ニーインと足部/足関節の動きの問題を少し理解できると思います。
ではそのメカニズムと理由を解説していきます!
足関節や足部が原因でニーインする方は、挙上動作の際、概ね足底面の内側部荷重が優位となります。
内側部に荷重がかかることで、【内側縦アーチが低下します】。内側縦アーチが低下することで、中足部には内向きの回転力が生じます。
その回転力が中足部から後足部、後足部から下腿へとどのように力が伝わるのかがポイントとなります。
そしてニーインするか否かのポイントととして重要なのが足部の外がえし運動にあります。
足部の外がえし運動とは、様々な定義がありますがここでは背屈(主に距腿関節)、回内(主に距骨下関節)、外転の複合運動として捉えて下さい。
ではニーインが起こりにくい状況と起こりやすい状況とは?
これは図を見ていただくことで理解しやすいと思います。
A,内側荷重しているが、下腿が内側へ傾斜していないパターン。
B,内側荷重していて、下腿が内側へ傾斜しているパターン。
Aの場合は、足部の内側への荷重とともに内側縦アーチ(舟状骨が降下)が低下し、中足部に内向きの回転力が生まれます。その内向きの回転力により外がえし運動(主に距骨下関節が回内します)が起こり、下腿の傾斜が起こりにくくなります。
Bの場合は、足部の内側への荷重とともに内側縦アーチ(舟状骨が降下)が低下し、中足部に内向きの回転力が生まれます。その内向きの回転力が外がえし運動(距骨下関節の回内)が不十分なことで、下腿へと回転力が繋がり結果、下腿がそのまま内側へ傾斜します。
実は内側荷重により下腿が内側へ傾斜するか否かは外がえし運動(特に距骨下関節)の柔軟性の違いにあります。
内側荷重により舟状骨が降下します(内側縦アーチの低下)、舟状骨とそれに連続する中足部が内側へ回転します。距骨下関節にて相対的な回内運動が生じると下腿は内側へ傾斜せず結果ニーインは起きにくくなります。
回内運動の主役は距骨下関節という話をしましたが、厳密には足部、足関節は小さな骨の集合体ですので個々の関節の可動性が重要となってきます。
これが足関節、足部の影響によるニーインの主要なメカニズムということになります。
結論
・内側部への荷重が優位
・内側縦アーチの低下
・足関節外がえしの柔軟性が低い
これら3つの要素が重なると足部/足関節が原因のニーインが起こりやすくなる。
ですので、スクワットで踏み圧が内側優位な方は、高重量になればなるほどアーチが低下しやすくなり、足首が硬いとニーインしやすくなるかもしれません。
そして話を少し戻しますが、【立位で内がえしの角度が大きい】という方は逆にいうと【外がえしの関節可動域が小さい】という事でもあります。
次のスライドを見て下さい、左側2つが正常な足の内側荷重の動き、右側2つが内がえし(外がえし可動性が低下)の人の内側荷重の動きとなります。
正常なアライメントと可動性を持っていれば内側へ荷重すると外がえしが起こり内側で踏む事が可能です。
しかし内がえし(外がえしの可動性が低下)の方は、内側へ荷重しようとすると外がえしが出来ずに下腿ごと内側へ傾斜して踏もうとします。
これがスクワットにおける足関節に起因するニーインのメカニズムとなります。そしてこのように立位で内がえししている人は、距骨下関節だけでなく、距腿関節も硬く、いわゆる硬い足関節、足部の持ち主でもあります。
そして足関節の内側を通り内がえしをするような、以下の筋肉が伸びにくいという特徴もあります。
メモ
○ 後脛骨筋
○ 長母趾屈筋
○ 長趾屈筋
これらの筋肉が硬かったり、短縮したりすると外がえししにくくなるために下腿が内側へ傾斜する事が考えられますのでセルフケアとしてはこの3つの筋肉がポイントとなります。
ニーインの解決策
ニーインを改善するためには、上述した【股関節後外側筋パフォーマンス】と【足関節/足部の外がえしの可動性】を改善する事が大切です。
足関節に関しては、外がえし運動、特に後足部(距腿関節、距骨下関節)の背屈や回内の柔軟性を獲得する事が目標となります。
そしてそれらを最終的には統合した形でスクワットフォームの再学習をしていかなければいけません。
a 股関節後外側筋パフォーマンス
① クラムシェル
② 片脚位での股関節外転/外旋
③ 抵抗バンドを用いたスクワット
b 足関節/足部の外がえしの可動性
(*抵抗バンドの向きは部屋の環境上このようになっていますが、可能なら実施する側足の後ろを通るように設置して下さい)
まとめ
特にニーインが起こりやすい身体の構造を把握した上で、起こりやすい状況を理解して対処していくのが大切ですね!
もし股関節まわりを強化しているけどニーインがどうしても起こってしまうという方は、足関節のエクササイズを是非試してみて下さい。
ちなみにですが、僕自身このエクササイズをした日と、しなかった日のスクワットの感覚がかなり変わったのでウォームアップで軽く身体を温めながら試してみて下さい!
理論的なところは、片脚スクワットと両脚スクワットでメカニクスがもちろん違いますし、その人が足底のどの部分を意識して床を押しているのかでもだいぶ変わると思います。
足関節の学びを深めるためにも次回に足関節と足部をもう1つブログかnoteでまとめますので楽しみに待っていて下さい!
参考文献
1)肥田直人 他,健常女性における片脚スクワット動作時の 膝関節外反と姿勢の関係,理学療法学第46巻第3号162 ~ 167 頁,2019