そんなお悩みを解決します。
目次
本記事の内容
・腰痛とは?
・腰痛の病態や原因はどこまで解明されているのか?
・腰痛に運動療法は効果的か?
・あなたの腰痛のタイプは?
ずっと座ってると腰が重い…、朝起きたら腰が痛い…、立ってるのが辛い…
気づけば腰をかばう日々が続いている。
いまや若い方から、シニア世代まで幅広く、とても身近な存在である【腰痛】。
今回は腰痛診療ガイドラインを基に腰痛の基礎知識から、それぞれの対処法をまとめていきます!
記事の信頼性
ユウスケ 理学療法士
理学療法士として臨床経験14年目/運動や姿勢と身体の痛みが専門でMSI(MovementSystemImpairmentSyndromes)コンセプトと出会い4度渡米/Twitter(ユウスケ | 筋トレ怪我ケガゼロプロジェクト)にてフォロワー約13000人/臨床業務とともに現在もMSIコンセプトの講師やアシスタント、各種イベントに精力的に参加している。
ブログを通して一般の皆さんへ発信することで、自分自身も知識を整理して学び続けています。
腰痛とは?
腰痛を有する患者は非常に多く、厚生労働省の国民生活基礎調査でも有訴者率が男女ともに腰痛は上位を占めています。
腰痛は
✔︎ 発症部位
✔︎ 有症期間(症状があった期間)
✔︎ 原因
それぞれによって定義されます。
腰痛と言っても、一体どの時期に当てはまるのかを把握して対応しないといけません。
腰痛がとても一般的な症状でありながらも、注意しないといけない点は腰痛の中に危険性の高い重要な脊椎疾患が隠れているかもしれないという点です。それらの疾患の危険信号(レッドフラッグ)を念頭に置かなくてはいけません。
知っておくべき危険性の高い重要な脊椎疾患には?
危険性の高い脊椎疾患
❶ 悪性腫瘍
❷ 感染
❸ 骨折
❹ 重篤な神経症状を伴う腰椎疾患(下肢麻痺、膀胱直腸障害などを伴う腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症)
このような危険な病気や怪我のサインがあるということは、常に頭に入れておかなければ命やQOL、ADLを守れません。
この点は我々医療従事者や、身体を専門とするトレーナーはもちろん、何より自分や家族を守るうえでも大切な知識となります。
腰痛の病態や原因はどこまで解明されているのか?
腰痛はしばしば特異的腰痛と非特異的腰痛に大別されます。
特異的腰痛とは、脊椎腫瘍、椎間板ヘルニア、尿路結石など診断が確立し病態に応じた治療法が存在する疾患です。
非特異的腰痛とは、筋・筋膜性、椎間板性、椎間関節性、心因性腰痛などで診断、治療が不十分で確立されていない疾患群です。
一般的にこの病理解剖学的診断が正確に行うことが出来ない非特異的腰痛は腰痛全体の85%と言われていました。
しかし2016年に発表された報告によると1)、320名中、特異的腰痛→78%(250名)、非特異的腰痛→22%(70名)と逆に非特異的腰痛が22%と少なかったようです。
今ままでは原因が明確ではなかった疾患も、原因が特定出来るようになって来ているようです。
ただし原因が特定出来ても治療法が明確ではない疾患は多く存在します。
研究の対象となる年齢や地域性などもあるかもしれませんが、診断や治療法は日々進化してるということですね!
腰痛の経過は?
急性腰痛の自然経過は概ね良好です。しかし慢性腰痛は急性腰痛に比べて予後は不良です。
実は慢性腰痛では心理社会的要因が腰痛を長引かせます。
どのような心理社会的要因が腰痛を長引かせるのでしょうか?
実は破局的思考と言われる、痛みの経験をネガティブに捉えるような思考パターンは痛みを長引かせることがわかっています。
破局的思考の3つの要素
▶︎痛みが頭から離れない「反芻 はんすう」
▶︎痛みに対する「無力感」
▶︎痛みを大きく見積もる「拡大視」
特に長引く腰痛は、自分の性格や思考パターンも影響しているかもしれません。
腰痛は生活習慣と関係があるのか?
体重、喫煙、飲酒、日常的な運動と腰痛との関係についてはエビデンスレベルの高い研究は少ないが、
✔︎ 低体重や肥満
✔︎ 喫煙と飲酒
✔︎ 運動習慣がない
が腰痛発症のリスクとなっているそうです。
健康的な生活習慣とストレスの少ない生活(ストレスと上手く向き合うことが出来る)は腰痛予防にとっての基礎となります。
一般的な診断手順は?
腰痛診療ガイドラインに記載されている診断手順は以下のとおりです。
医師の方々はこのようなことを頭に描きながら、適切な診断をしているのかと思うと本当に尊敬しかありません。
私は医療機関で働いていますので、私のもとに来る患者さんはすべて医師が診断し適切なリスク管理をしながらリハビリテーションを行なっています。
「腰痛の方は必ず病院に行きなさい!」そんなことは言えませんが、以下に記載してある危険信号に該当する方や明らかなエピソードがある方は自己判断せず受診した方がいいでしょう。
危険な脊椎疾患を見つけるための危険信号は以下のとおりです。
重篤な脊椎疾患(腫瘍、感染、骨折など)の合併を疑うべきレッドフラッグ(危険信号)
✔︎ 発症年齢20歳以下または55歳以上
✔︎ 時間や活動性に関係ない腰痛
✔︎ 胸部痛
✔︎ 癌、ステロイド治療、HIV感染の既往
✔︎ 栄養不良
✔︎ 体重減少
✔︎ 広範囲に及ぶ神経症状
✔︎ 構築性脊柱変形
✔︎ 発熱
例えば、安静にしてても痛い、動作と関係なく痛みが走る、爪先が上がりにくくなった、足先にしびれがあるなどは、当院に来ている患者さんの病気のエピソードとしても多いかもしれません。
このような危険信号があれば即病院を受診しましょう!
腰痛に運動療法は効果的か?
最新の腰痛診療ガイドライン2)において、慢性腰痛に対する運動療法は有用であるとされています。
急性期、亜急性期に関しては効果なし、あるいは不明でまだまだ運動療法の効果は限定的でしょう。
個人的な見解にはなりますが、急性期や亜急性期では再発予防の為にも、痛みの度合いに応じたエクササイズは必要だと思います。いちよそのような方向けの記事も書いていますので参考にしてみて下さい!
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ぎっくり腰 | 急性腰痛症〜原因/対処法/再発予防〜
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特に慢性腰痛に関しては海外をはじめ運動療法は効果的であるという質の高い研究は出ているようです。
日本における全国的なRCT(研究の中では三番目に質の高い研究)では、運動群(体幹筋力強化とストレッチを10回、1日最低2セット)と対照群(非ステロイド性抗炎症薬内服)を比較したところ、腰痛の強さやFFDに差はなかったものの、腰痛関連QOLが運動群で有意に改善しており、国内においても慢性腰痛に対する運動療法の効果が示されています3)。
しかしながら実際にはどのような慢性腰痛患者さんにどのような運動療法を提供するのが最も効果的なのか統一したプログラムがないのが現状です。
そんな中で、私が専門とするMSIコンセプトは病期に応じて、痛みのある運動方向をもとに腰痛に対するエクササイズや生活指導をします。作成したプログラムはその内容も少し参考にしながら自宅で出来る個別のエクササイズプログラムを作成しています。
運動を教えて欲しいけど何をしたら良いかわからないという方に身体の状態に合わせたプログラムを用意しています。
では実際にどれがあなたに合うプログラムかを簡単にチェックしてみましょう!
あなたの腰痛のタイプは?
簡単なチェック方法ではありますがあなたの腰痛のタイプをチェックしていきましょう!
(注:実際のタイプ分けは非常に多くのテストをしながら分類していきます、あくまでも参考程度ですご理解下さい)
質問 ①
日々の生活の場面を思い出して下さい、あなたの腰痛は主に前にかがんだ姿勢で痛みが起きますか?それとも腰を反らすとき伸びている姿勢で痛みが起きますか?それとも両方でしょうか?
質問 ②
腰をひねった時にも痛みが出ますか?
これらの質問で該当する記事をまずはチェックしてみましょう!もし複合タイプ(屈曲回旋型、伸展回旋型)の方はまず回旋型腰痛の記事をご覧になってから屈曲型、伸展型と当てはまる記事をチェックして下さい!
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もし痛みに再現性がなくどの方向にも痛みがある場合には、以下の記事をチェックしてみて下さい!
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まとめ
今回は腰痛ガイドラインを参考に記事を作成しました。
様々な業界で腰痛が取り上げられていますが、このガイドラインを基本として腰痛について扱っていかなくてはと改めて感じました。
腰痛の方も、腰痛の方を対象として指導される方もこのガイドラインは共通認識を持つうえで非常に重要な知識が詰まっています。
私自身もまだまだ勉強不足ですが、少しでも健康を守るために学び、情報を皆さんと共有したいと思います。
参考文献
1)H.Suzuki.Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study. PLoS One. 2016 Aug 22;11(8):e0160454. doi: 10.1371/journal.pone.0160454. eCollection 2016
2)日本整形外科学会診療ガイドライン委員会・腰痛診療ガイドライン策定委員会(日本整形外科学会・日本腰痛学会監訳):腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版,南江堂,東京,2019.
3)Shirado O.Multicenter randomized controlled trial to evaluate the effect of home-based exercise on patients with chronic low back pain: the Japan low back pain exercise therapy study:Spine 35(17), 811-819, 2010